Menu JLPT / 1996: JLPT-2 (N3-N2)
Japanese language proficiency test
009 - Task 1
Grammar and Reading

 
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1234から最も適当なものを一つ選びなさい。
 
ひとりの子どもの話です。
仕事で疲れ切って、家ではごろごろ(注1)してテレビばかりを見ている父親はあまり存在感がない、まるで透明人間みたいだ、という子の文章がありました。
 これではいけない。子どもたちに、父親が働いている姿を見せたらどうか。そういう意見もあって、ある母親は子どもを連れて、父親が働く工場へ行くのです。
 その子が参観(注2)の記を書きました。
 「友だちのおとうさんが、どこかの課長さんだとか、放送局につとめているとかいうとき、私はいつもだまっていました。『わたしのおとうさんはエ場のコックさんだ」というのが、なんだかはずかしくてならなかったのです。でも、わたしは、きょうからそれが( ③ )いえるような気がします」
 その子は初めて、白いコック帽をかぶった父親の働いている姿を見ます。野菜サラダを作っている。びっくりするほど早い手つき(注3)でてきぱきと(注4)仕事をすすめている。
 「今まで、あんなおとうさんを見たことがありませんでした。何かよその人のような気がするくらいでした。でも、やっぱりわたしのおとうさんでした。おとうさんは、はずかしそうな顔などちっともしていません。わたしだけが、なんではずかしがっていたのかと思うと、なんかわるいことをしていたような気がしました」
 お昼のサイレンが鳴る。大勢の工員さんたちが集まる。「大勢のエ員さんたちが、待ちかまえて(注5)いたように食べているのを観ると、わたしまでなんだかうれしくなりました。みんな残さず食べてもらえるかと、じっとそれを見ていました。
  現場を踏んだことで、子どもの父親観(注6)が変わるのです。みんなが残さずに食べてくれるだろうか。そう思ってじっと見ている子の心臓の音が伝わってきます。「お父さんの働く場所」という現場で、子どもは家にいる父親とは別の父に出あうことができたのです。
(展濃和男「文章の書き方」岩波新書による〕
(注1)ごろごろする:特に仕事もしないで過ごす
(注2)参観の記:見学したときのことを書いた文章
(註3)手つき:手の動かし方
(注4)てきぱきと=適切にどんどん仕事を進めていく様子
(注5)待ちかまえる:すぐに対応できる姿勢で待つ
(注6)父親観:父親についての見方
 
問(1)  ①「これ」は、何を指すか。

     1.父親が家でテレビばかリ見ていること
     2.父親が仕事で疲れ切っていること
     3.子どもが父親の存在を感じないこと
     4.子どもが父親の働く工場へ行くこと
  
問(2)  ②「はずかしくてならなかった」のは、なぜか。

     1.テレピばかり見ている父親に料理ができるとは思えなかったから
     2.コックさんなのに、家では疲れていて全然料理をしようとしないから
     3.コックさんといっても、放送局ではなくて工場のコックさんだから
     4.友だちに言えるような立派な仕事を父親がしているとは思えなかったから
  
問(3)  (③)に入る適当なことばを選びなさい。

     1.平気で
     2.ますます
     3.がんばれば
     4.じょうずに
  
問(4)  ④「よその人のような気がするくらいでした」とあるが、それはなぜか。

     1.家で何もしない父親が生き生きと仕事をしていたから
     2.子どもが来たのに父親が無視して仕事をしていたから
     3.父親が会社の課長か放送局の人間のように見えたから
     4.父親に白いコック帽があまリ似合っていなかったから
  
問(5)  ⑤「わるい」というのはここではどんな意味か。

     1.友だちに対してずるい
     2.父親に感謝したい
     3.友だちに対してひきょうだ
     4.父親にもうしわけない
  
問(6)  ⑥「みんな」は何を指すか。

     1.工員さんたち
     2.コックさんたち
     3.子どもたち
     4.工場の昼食
  
問(7)  ⑦「心臓の音が伝わってきます」とあるが、ここではどういうことか。

     1.子どもの心臓の音が工場の人に聞こえること
     2.どきどきしているようすが読んでいる人に分かること
     3.はきはきしているようすが読んでいる人に想像できること
     4.びっくりしているようすが工場の人に感じられること