(3)生まれてすぐから人を(注1)注視し、人の動きを目で追い、3ヵ月頃にはおとなの表情とおなじ表情をつくり、半年もたつと相手の感情もわかり始めるような(注2)乳児が、他者を利用して必要な知識や技能を学ぶのはきわめて自然なことだと思われる。①こうした仕組みのひとつが「社会的参照(social referencing)」である。
アメリカ合州国の発達心理学者キャンボスは、1歳前後で、(注3)ハイハイや歩行によって自分で移動が終るようになった子供の社会的参照のようす実験的に確かめた。たとえば、こどもが実験室に(注4)なじんで母親といつものように遊んでいる状態になった時に、②突然大きな音をたててみる。するとそれまで遊んでいた子供は、あわてて母親の顔を見る。その時母親に恐怖の表情をしてもらうと、このグループの子どものほとんどが遊ぷのをやめ、あわてて母親に近づいたり抱かれたがったりした。ところが、この時に母親が( ③ )を見せるように指示されたグループの子どもでは、母親の顔を見て、心配することはないと判断したように再び遊びに戻ったのである。これは子どもが自分では処理できない事態になると、まわりの人々、とくにもっとも妊きな人がいればその人の表情を参照して、どうしたらよいかを判断しているのだと解釈できよう。
(波多野誼余夫・高橋恵子「文化心理学入門---子どもと教青」による) (注1)注視する:じっと見つめる (注2)乳児:生まれてから1歳ぐらいまでの子ども (注3)ハイハイ:乳児が手と足で這って進むこと (注4)なじむ:慣れて落ち着く
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問(1) ①「こうした仕組み」とあるが、どんな仕組みか。
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1.乳児がまわりの人々を利用して学習する仕組み 2.乳児がおとなの表情とおなじ表情を作る仕組み 3.乳児が人を注視し、人の動きを目で追う仕組み 4.乳児が相手の感情を理解するための仕組み |
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問(2) この文章で紹介されている実験では、まず初めに、何をしたか。
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1.こどもを実験室に入れ、大きな音をたてて遊んでもらった。 2.こどもを実験室に入れ、ハイハイや歩行ができるか確かめた。 3.子どもが自分の母親以外の人にも慣れていっしょに遊べる状態にした。 4.子どもが実験室に慣れて母親といっものように遊び始めるのを待った。 |
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問(3) 「突然大きな音をたててみる」とあるが、これは何のためか。
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1.母親がこどもにどう対応すべきか判断できない状態にするため。 2.こどもが自分で母親のところまで移動できるかを確認するため 3.子どもが自分ではどうしたらよいかわからない状況を作るため 4.母親が子どもにどんな表情を見せるかをくわしく調べるため |
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問(4) ( ③ )に入る最も適当な言葉はどれか。
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1.あわてた表情 2.厳しい表情 3.笑顔 4.涙 |
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問(5) この実験では、とのようなようすが確認されたか。
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1.子どもがどうしたらよいか判断できなくなったとき、親しい他者の表情を参照して行動を決めるようす 2.子どもが自分では処理できない事態になると、まわりにいる好きな人の感情が参照できなくなるようす 3.母親が子どもの表情を参照して、自分が子どもにどう対応したらよいかを判断するようす 4.母親がまわりの人の表憎を参照して、子どもにどんな指示をしたらよいかを決めるようす |
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